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つれづれ日記
1997年6月28日
小暮宣雄

PHOTO/SEKI SATORU
001-BLOCK PHOTO 1997.6.28.土
  台風・丹野・サカキバラ、3つの衝撃。台風8号が近畿に近づく、どうも台風の当たり年。
早めにJR大阪環状線の弁天町に着いて、安治川のほとりまで。
 倉庫、工場、砂の山、上流に少し行けば中央市場、風が強まり実に「001BLOCK・丹野賢一」日和。会場の「石炭倉庫」は、名前のサイバーパンクっぽいイメージとは裏腹な普通の真新しい黄土色のビル。2Fのギャラリーホールではちょうど親と子のドラマ「種」の受付中で、ポプリなどを販売する、丹野世界に集まる私たちとはかなり異なる出で立ち。
 でも、大きな倉庫の荷物エレベーターで3階にゆく私たちに待ち受けていたものは・・。
 手伝っている鳴海八重子さんは体中ブロック埃。
整理番号が張られたブロック(石?)の欠片をビニールで封印、それを見せて乗る石油運搬用リフトの中は赤く。
 会場は石油が入っていた(公演のために一時運び出してもらったと制作の松本美波さん)天井の高い倉庫空間、一面乳白色。
そこに照明装置とスピーカー、壁になって積まれたやはり濁った白色のブロック、その背後に隠されている世界、鼻につく臭い。
 どこで観たらいいか分からない。偶然に目撃できればいいや、という諦観と過剰な期待、あてどない待機。

 半分が黒、残りの半分は背景の白に溶け込む丹野賢一らしき人型が壁に沿って蠢く。
顔は覆われ、松本じろのインダストリアルノイズもかそけく地味な導入。
 次に待ちうける(キットソウダ)壁の崩壊、への予見をいやがおうにも増大させ・・。
角になった部分を残した壁の倒壊は、破壊なのに審美的な構築の繊細さ。
隠されていた背後には積み上がったブロック、奥へ奥へ幾重にも続きそうな白濁した壁に呆然とする。ただただ、そこに吸い寄せられ。
 壊してくれと囁くブロックに身体を任せていくのか、いつまで、どのように続いてもこの現場に立ち会いたい・・。
 顔の覆いをとるためらいの人工昆虫のごとき動き、ばらけたブロックを積み上げ体をぶつける他愛のなさ。観客が身を反射的にのけぞらせるブロック投擲。頂点は、積み上げられたブロック塔によじり登り自らの墜落を知りながらブロックを落としていくシークエンス。
 午後8時から9時までの1時間だったよ、とHさんにいったら信じられない、という顔。Yさんは自分がブロックになってしまった、と。
 もっと大音響で鼓膜に感じられなくなる、つまり、聴くという行為が意識の中で対象として像を結ばれなくなるまで来るかとも予想していた。 
 だが、観ることの不可能さを味わわせてくれたこと、ブロック臭に埃を吸うという強烈な鼻体験など。終わってみたら、台風は石炭倉庫にすべて吸収され尽くしていた。



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