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モノの見方を変えてしまうドラマの創造
吉永美和子

009-COLLAR フライヤー  昨年神戸アートビレッジセンターで、一面鏡張りの舞台をハンマーで壊しまくるというスーパーインパクトなパフォーマンスで関西人たちの度肝を抜いた、丹野賢一が再びやって参りました。今回は彼のウリである大がかりな舞台美術はなく、ソロダンスのように肉体1つだけで見せ切るという、丹野さんにしてはシンプルな内容。しかし衣裳が題名通り「詰襟」「皮膚」「水玉」「ボロ」の4種類があり、まとった衣服(?)にあわせた4つのショート・パフォーマンスを見せるという趣向です。例えば『COLLAR』では拘束されたもどかしさを、『DOT』では自動人形のようなキッチュな動きを表現する…という具合。「舞台美術」と「衣裳」という違いこそあれど、間違いなくこれも彼がテーマとする「モノと肉体が対峙することで出会うドラマ」の一つなのでしょう。

 確かに昨年のような、これ以上はないほど分かりやすい破壊(カタストロフィー)の出現を期待していた向きには、ちょっと物足りなかったかもしれない。しかし人間とは身にまとうもの1つで、ここまで微細な動きから肉体そのものの印象までガラリと変貌させられるのかと気付かされるという点では、存外興味深い試みでありました。特に生々しい内臓器官を連想させる『SKIN』では、ただ着替えただけなのに先ほどのパフォーマーと同じ人物と思えないほどの異様さを醸し出してて、かなりゾッとさせられた。ついでに普段私たちがファッションとして身につけている衣服そのものの意味についても、ちょっと考えさせられるものがありましたね。攻撃的なファッションをしてたらやっぱり攻撃的な人間になるのかな、とか。そういう日常の「モノ」の見方を変貌させてしまうことを丹野さんが少しでも目論んでいるとしたら、私は前回のよりも相当影響受けたと思います。確実に。しかし最後の『RAG』。生ギター演奏に合わせたパフォーマンスはもちろんだけど、衣裳もなかなかカッコ良かった。欲しい(笑)。
(9/27ソワレ■トリイホール)


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