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舞踊 丹野賢一+山田うん
ダンス言語の枠 大胆に逸脱

朝日新聞 2001年10月6日夕刊
石井達朗・舞踊評論家

朝日新聞 PHOTO  丹野賢一と山田うんの合同ソロプロジェクトというこの公演は、それぞれがソロ作品を3つずつ交互に踊るという変わった方式をとっている(9月15日、東京・吾妻橋のアサヒスクエアA)。スタイルも方法もまったく異なる2人の共通項をあえて探せば、既成のダンス言語の枠を大きくはみだしたところで、だれの色にも染まらないオリジナルな作品をつくることだ。

 丹野は3つの作品でかなり特殊な衣装とメークを転換しながら、自らで考案した奇妙なキャラクターを演じる。血や傷だらけの体にボロ着をまとってふらついたかと思うと、次作品では怪獣か怪鳥をかたどった白のドレスでのたうつ。最後はテカテカの赤の合成樹脂の素材に身をくるんで、示威的な身ぶりをしながら壁に激しくぶつかりつづける。鳴りひびくノイズ音。ダンスというよりアクションである。キッチュなうそっぽさと奇異なリアルさが絡み合う。

  山田の作品はどれをとっても丹野とは対照的に、日常のイメージが横溢している。化粧をしたり、髪をなでたりなどのしぐさを裁断し、どこか気ぜわしげだがスピーディーで精ちな動きに仕立てる。新人だが、作品づくりのアイデアとそれを支える技術とをしっかり確かめながら歩んでいる数少ないダンサーだ。最後に上半身裸で「8月15日」と題された作品を踊る。情緒を排したキレのいい動きに、機知がある。この音を担当した足立智美のサウンドのセンスは秀逸。彼の活動も期待をもって見ていよう。

 引用、反復、ハイブリッド(異種混交)ということにおいて、この2人はポストモダンの脈略にある。予定調和が見えないのがいいところではあるが、将来はより知的に、かつクールに構成力とスケール感のある作品をつくっていけるかどうかが問われるだろう。小粒ながらも、わが国のダンス状況を底辺から活性化する公演であった。


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