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DANCE SCENE IN JAPAN
関西ダンスシーン 2002年5〜8月
犬島アーツフェスティバルより

季刊「DANCEART」(ダンスカフェ)No.25(2002年12月20日発行)
竹田真理

DANCEART PHOTO  劇団維新派の公演にともなって開催された島をあげての真夏のイヴェント「犬島アーツフェスティバル」から、ダンス関連の公演を2つ。

(中略)

●丹野賢一「PUNK EXECUTION〈No.XXX〉」 7月28日 午後5:00 発電所跡

 丹野の仕事は舞台に大量の物質を持ちこみ特異な空間を設営して行うもの、衣装とメイクで身体のイメージを変えていく短いソロ・シリーズ、野外や街中の現場にゲリラ的に出没するもの、の3つに分類出来る。
犬島での野外パフォーマンスはそれらの全てのエッセンスを含んだものと言える。

 40度にもなろうかという日中の暑さを何とかやり過ごし、ようやく午後5時、パフォーマンスは島内の発電所跡地で行われた。
廃墟となった西洋式の建物の屋根はなく、アーチ型の開口部が並ぶレンガの壁が高く聳える。
そのアーチの一つに、気が付くと黒いメガネに髪を逆立てた丹野が姿を現している。蔦のからまる廃墟が生き生きと精気を帯びて見え始めた一瞬である。

 廃墟を思いのままに巡るさまは、現場を征服して歩く異形の王者の相貌だが、肩をそびやかすような独特な身振りをまじえ、パンクな不遜さも忘れない。
ここから颯爽と木立ちを抜けて場所を変え、フリルのシャツを身に付けた第2部では、甘美なナルシシズムを湛えて崖の斜面に横たわる。
さらに木立ちをぬけて第3部は海辺の岩場でのパフォーマンス。
最終章では赤いロングコート姿で海に入り、そのまま漂いながら去っていく。観客は岸辺を走って水上の赤いコートを追いかけた。

 場合によっては危険を伴うシーンがある。
たとえば第2部、崖をよじ登ろうとしてかなわず、土くれとともに地面に崩れ落ちる行為を繰り返すが、そこできっちりと「崖=世界に拒まれる者の哀しみとエロス」を演じきる丹野にはパフォーマーとしての余裕が感じられ、同時に野外パフォーマンスという方法が、ハプニング的な現場性より、いまや円熟した形式であると実感した。
いかなる場所にあっても異端であろうとする意志をスタイリッシュに可視化した丹野の真骨頂というべきであろう。


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